同人サークル<アレ★Club>公式ブログ(通称:「アレ★Blog」)

ジャンル不定カルチャー誌『アレ』を作っている<アレ★Club>の日々の活動記録です。

藤原紀香のブログ炎上から見る「受け入れられる異常」について

★対談者紹介★
▲山下泰春(@yasuharu_are)
<アレ★Club>の代表。気を抜くと抽象的な言葉遣いになって理解されなくなる。

◯市川遊佐( @ichikawa_yusa)
<アレ★Club>の副代表。気を抜くとキツイ物言いになって嫌われる。

www.j-cast.com

遺体の写真を上げたから怒られた、わけではない

▲山下
先日、女優の藤原紀香さんが亡くなった愛犬の写真をブログにアップして炎上しましたね。「不謹慎だ」とか「非常識だ」という批判が出ていますが、どう考えるべきでしょうか。私にとっては、亡くなった愛犬の写真は、かなり綺麗に見えたんですけどね。


◯市川

安らかに眠ってるね。まあでも、動物の遺体とか見たくないって人も多かったろう。

▲山下
最近、この手の話題には事足りませんね。遺体関連で言うと、ツイッターでも友人とか自分の子どもの遺体の写真をアップして炎上するという事件がありました。

matome.naver.jp

【驚愕】DQNの葬式の写真流出…やばい…(画像あり) : NEWSまとめもりー|2chまとめブログ

僕はこの話のほうが藤原紀香さんの話より驚いたんですけど、市川さんはどう思います?

 ◯市川
僕は死んだ人の写真を撮ること自体は心情的に理解できるんだよね。次の日には骨になっちゃうんだし。遺したいって気持ちがあるんだろうね。っで、共感を求めてアップした結果、こういう炎上が起こってしまう。
最近は息苦しいね、何をやってもうっかりすると袋叩きにあう。炎上自体はさ、「小さいコミュニティでちょっと物議を起こしそうな出来事があって、それがツイッターとかを通じてコミュニティの外部に漏れ出て、最後にそれを拡散する人たちが騒ぎ立てて炎上になる」ってパターンが多いわけだけど。最初に疑念を抱いた人が、火に油を注ぐ感じで人を呼び寄せる。著名人は特にちょっとしたことで炎上のタネにされちゃうので息が詰まりそうだね。

▲山下
そうですね、息苦しいってのは分かります。僕は死んだ人の写真を撮るってのは体感的にちょっと分からないですけど。分からないけど、個人的には否定しようとは思いません。いろいろな考え方があるでしょうから、これはこれでそのうち別途ブログにしましょう。

◯市川
ともあれ、実は「死体画像をアップロードした」こと自体は文句のタネになるとは限らないと僕は思うんだよね。だって、ネット上には死体の画像なんて沢山アップロードされているわけだし。どんな写真にしろ動画にしろ、受け手が「見ることはないだろうと思ってたモノが目の前に出てきてビックリする」と、文句があがりやすくなる。

▲山下
記事を見る限り、ブログでは共感するようなコメントも多かったようですし、市川さんの言っていることは正しいと思います。
共感する人がいる一方で、藤原紀香さんの日常を見ようと思ってたらペットが死んだ話を写真付きで見せられたことで、ショックを受けてしまった人がいる。その人が「見ないだろうと思ってたモノを見せられる」のが問題なんですよね。そうやって考えると、今回の藤原紀香さんの事件も、人間の遺体をツイッターにアップした事件も、ショックを起こす仕組みは同じということですね。
これが動物園の飼育員さんのブログとかだったらショックには繋がりにくかったんでしょうね。そこだったら、動物に関する生老病死いろいろな情報が出てくると、みんなある程度予測できる。藤原紀香さんの場合は、ペットはいても、ペットの遺体の写真を上げることまでは予測できない。

◯市川
もっと言えば、惨殺死体だろうがなんだろうが、それを勉強か何か知らないけど、見たくて見てる人は文句を言わないよね。ISISの人質殺害動画とかを見たくて見る人だって、グロいとか気持ち悪いとか思うこともあるでしょう。グロいとか気持ち悪いとか思っても文句を言わない、というケースもあるわけです。
何が出てきても期待していたモノ見たかったモノだったら文句は出ないし、期待してないモノ見たくなかったモノだったら文句が出るってことだね。どんなコンテンツも、怒られるかどうかは見る人が期待していたか期待していなかったかで決まる。

▲山下
見る人の期待に沿ってる限りは受け入れてもらえるわけで、そういう意味では「ネットのせいで不自由になった」とは言い切れないわけですね。実際、僕のマイナーな趣味とかもネット上の然るべき場所に行けば簡単に楽しめるようになりましたし。
最近は「人を不快にさせる恐れのあるものは、ネットには公開してはいけない」という雰囲気を感じてて、何をやっても怒られるんじゃないかっていうと息苦しさを感じてたんですけど、そう考えるとちょっと気がラクになった気がします。

ネットで受け入れてもらえる異常、とは

◯市川
「見る人の期待に沿っているコンテンツは受け入れられる」ってのはニコニコ動画とかで「この発想はなかったwwww」みたいに皆が盛り上がってる動画とかでも同じ。あれだって、予想した範囲の狂気がウケている。使われてるネタだって大抵は「テンプレ化された狂気」でしょう。ちょっと古いけど広い知名度を得たものでいえば「真夏の夜の淫夢」とか。こういう「テンプレ化された狂気」をほどよく調理するとウケる。あるいは狂気をテンプレ化できる形で提示できるとこれもウケる。そういうネタが次の時代のテンプレになる。

▲山下
ネットを使う人は事前にある程度予想した範囲内での予想外を期待しているんですね。そして見る人のそういうストライクゾーンに入るネタを投下できる人が評価してもらえる。つまり相手と想像している範囲をうまく共有できる人がネットを楽しめるんですね。供給者側も需要者側も。

◯市川
逆に言えば、互いの想像を利用しあうこの共犯関係さえ踏まえていれば「面白い」コンテンツとして受け入れてもらえる。相手の想像を読み合うゲームなんだよね。相手の想像と自分の想像が噛み合うかどうかだけが大事だから、想像の外側、現実のことなんかどうでもいい。ていうか現実なんて邪魔なんですよ、コンテンツにとっては。

▲山下
自分と相手が共有している想像の世界に「酔ってる」わけですね。そしてこの「酔い」を覚ますようなことをしてはいけないと。

◯市川
そう。藤原紀香さんも、芸能人のブログ記事でそういうこと書いたら一部のファンがビックリするのは分かりきった話だったと思うんだけど、すごく悲しくて、それを誰かと共有したかったんだろうね。でもそういう生々しい現実を受け止められるファンばかりじゃあなかっただろうね。

▲山下
でも、ネットって「見たいモノを見る」ためのツールですよね。犬の遺体とか人間の遺体が上がっていても、別にスルーして他のモノを見ればよかったのでは?とも思います。

◯市川
いやいや、「見たいモノを見る」ためのツールだからこそ、期待も高まるし無防備にもなっていたんでしょう。好きなものを見ることだけ考えてウキウキしていた人は、ビックリするようなものを見たらスルーなんか出来ないよ。

▲山下
なるほど。ネットって、相手の期待を普段以上に繊細に考えて自分を出していかないといけない場所なんですね。街中ですれ違う人に僕たちは大して期待していない一方で、ネットでは何かを期待してどこかのサイトやSNSにいくところからスタートします。だから街中で変な人がいてもスルーしやすいのに対して、ネットで見かける人がおかしなことをすると普段以上に気になる。こういう仕組みがあるんでしょうね。ネットはネット以前にあった公共の場よりも、期待が先立つ分だけ注意深く振る舞わないといけない場所なのかもしれません。

◯市川
そうね。ネットで自分のありのままを素直に出してはいけない。不思議な感じがするけど、みんなの想像」っていう「現実じゃないモノ」こそが、僕たちがうまく渡って行かないといけない「現実」なんだってことを踏まえて発言しないといけないね。

▲山下
でもネットは「見せるべきものを見せる」っていう使い方もできますよね?市川さんのほうが詳しいと思いますが、機械学習とかで重要な情報をピックアップして見せるとか。そういう使い方はごく一般的なネットユーザーの間ではあんまり流行らないみたいですけど。

◯市川
まあ「見るべき」モノより「見たい」モノの方が、義務より願望なぶん当然強いからね。やっぱり酔うためにネットを使っている人が多いわけだね。だからGoogle検索も数年前から同じ単語で検索しても人によって違う結果を見せるように変わったんだろうし。僕なんかGoogleMaps開くといつもどこに二郎があるか表示されるよ(笑)
山下くん、気分が滅入っちまったし、これから二郎行こうぜ。

▲山下
それ、僕のお腹の調子が悪いって分かってて言ってます?(怒)公共性がないなあ!

----

ネット炎上の研究

ネット炎上の研究

 

 いくら配慮しても燃える時は燃える。

パターン認識と機械学習 上

パターン認識と機械学習 上

  • 作者: C.M.ビショップ,元田浩,栗田多喜夫,樋口知之,松本裕治,村田昇
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2012/04/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 6人 クリック: 33回
  • この商品を含むブログ (18件) を見る
 
パターン認識と機械学習 下 (ベイズ理論による統計的予測)

パターン認識と機械学習 下 (ベイズ理論による統計的予測)

  • 作者: C.M.ビショップ,元田浩,栗田多喜夫,樋口知之,松本裕治,村田昇
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2012/02/29
  • メディア: 単行本
  • 購入: 6人 クリック: 14回
  • この商品を含むブログを見る
 

 機械学習ワナビーを抜け出したかったら王道はコレ。難しいからサラッとは読めないぞ!