同人サークル<アレ★Club>公式ブログ(通称:「アレ★Blog」)

ジャンル不定カルチャー誌『アレ』を作っている<アレ★Club>の日々の活動記録です。

Kindle Unlimitedを使ってみた!~KinU(アンリミ)は出版界を変えるのか?~

★対談者紹介★
▲山下泰春(@yasuharu_are
<アレ★Club>の代表。Kindleユーザー。現在KinUのお試し期間中。

◆永井光暁
<アレ★Club>の事務局長。非Kindleユーザー。どっちかというと紙本派。

◇市川遊佐(@ichikawa_yusa
<アレ★Club>の副代表。非Kindleユーザー。どっちかというと電子書籍派。

 

▲山下
先日、日本でも「Kindle Unlimited」がサービス開始しましたね。世間では「アンリミ」と呼ばれているみたいですが、ここでは分かりやすく「KinU」としときましょう。この前Kindle Paperwhiteを買った私は、早速絶版になっていたゲーテの『タッソー』をダウンロードして読んでいます。ゲーテ最高~!

Kindle Paperwhite Wi-Fi、ブラック

Kindle Paperwhite Wi-Fi、ブラック

 

 
◇市川
まーたこの男は……ところで、KinUって月額980円をAmazonに払うと色んな作品をタダとか安い値段で読めるってサービスだったっけ?
 

▲山下
ちょっと違いますね。「月額980円で読みたい放題」です。完全に無料なので、KinUを使っている間は課金は発生しません。
これ、すごく便利です。普段は買わないような本も気軽に手に取れますし、ネットが通じるところであれば、読みたい本の入れ替えもスムーズにできます。家にWi-Fiが通っていれば、自室でも寝床でもトイレでも読める。
上限の10冊までは本を自由に読めて、11冊目を読もうとすると本を入れ替えないといけないんですが、それもどこでもできるので気にならないですね。
 

◇市川
なるほど。良さげだね、KinU。
 

◆永井
うーん、確かに良さげっちゃ良さげだけど……こういう新しい取り組みはスゴい反面、チョット怖いねぇ。もちろん、消費者視点だとこういうサービスはメッチャ便利だと思うよ。だけどその反面、作り手側の視点に立てば、消費者が「コンテンツを作るには金がかかるんだ」っていう意識を無くしてしまわないか多少不安でもある。なにせ、Pixiv界隈とかでは既に、絵師にタダで絵をせびって断られたら逆ギレした人なんてのも結構出てきてるみたいだし、ね。

 

jin115.com

 

▲山下
似たような事例だと、素人が依頼する場合だけじゃなくて、企業が依頼する場合もありますね。そしてこれは、仕事を破格の安さで引き受けてしまう絵師もいるという問題でもあります。これはこれで難しい問題ですね。

 

matome.naver.jp

 

◇市川
こういう問題が起こるってことは、サービスの裏側でお金がどういう風にクリエイターに回っていくのかが見えにくいことにつけ込む人や、つけ込まれる人が少なくないということを表してるんだろうね。
ところで、そういう「消費者には見えないお金の流れ」まで把握してサービスを使っている人って、どれくらいいるんだろう?少なくともKinUを使っていない僕は、KinUの仕組みについては何も知らないです。
 

◆永井
調べた限りでは、KinUは「初めて読まれるページの数」ごとにクリエイターにお金が回るみたいだね。たくさんのページを読んでもらえたクリエイターは、たくさんお金がもらえる。簡単に言えば、Amazonのキンドル・ダイレクト・パブリッシング(KDP)の、Amazonの取り分が無いバージョンみたいなモンかな。定額の利用料がAmazonの取り分で、それ以外は作家さんや出版社の利益になるって感じ。

 

kdp.amazon.co.jp

 

◇市川
それだと、クリエイターとしては期待も不安も半分半分な感じがするね。いちいち金を払うっていう障壁が無くなることで、コンテンツが読まれやすくなるかな、と思ったりもするけれど、みんな同じ条件だから激しいパイの取り合いが起こる気もするねえ……。もちろん、永井さんがさっき指摘した「支払い意識」の問題もそうだし。
 

▲山下
いずれにせよ、出版業界に大きな影響を及ぼすのは間違いなさそうですね。Kindleが日本で発売された時にも「電子書籍は紙がいらなくなる分、安くなる。紙に依存していた既存の出版業界にとっては大ダメージだろう」とかは言われていました。しかし、今回はもっと根本を揺るがすような大きな変化が、KinUの登場によって起こってくるような気がします。コンテンツの消費の仕方そのものを変えるような。
 

◇市川
というと?
 

▲山下
思うに、電子書籍を含めた「本」というコンテンツの販売形態自体が揺らいできているんじゃないでしょうか。今まで本というのは、一冊一冊バラバラに購入されていました。それは電子書籍でも同じです。
でも、KinUはプラットフォームにお金を払いさえすれば、コンテンツを自由に行き来できる。そしてクリエイターは1ページ単位で利益を上げることができる。これって、バイラルメディアやYouTubeみたいな、広告表示数・クリック数で収入を得るタイプのメディアに似ていませんか?昔に比べて、お金の流れ方がずっと巧妙になっているように思います。
 

◆永井
今まで「本」っていうコンテンツは聖域だったんだと思うよ。これまで本に付けられる価格ってのは「出版社」、「(新書かハードカバーかみたいな)版型」、それと「ページ数」である程度は計算できた。悪く言えば、内容の検討は雑なまま、市場価値が決められてきたってワケ。
でもKinUなら、市場価値はページが開かれる、あるいは開かれないかで決まる。それって、本を買うか買わないかよりもずっと「実際に読むか読まないか」ということを示す指標になるよね。要するに、KinUの登場によって「読まれれば価値が付いて、読まれなければ無価値」っていうシビアな世界が到来したワケよ。
 

▲山下
でも、開かれたページ数勝負となると、これからはプロモーションが上手な人だけが生き残っていく世界とかになるんですかね。「どのページも最後の方は次のページを開かせようと思わせぶりになっている本」なんてイヤですよ僕は……。「ページ数単位でお金が発生するようになったせいでコンテンツの質が低下しました」とかなったら、目も当てられない。
 

◇市川
一定の金額を支払えばコンテンツにアクセスできる、という点だけ見れば、メルマガとか有料ブログと似ている気もするね。でも、メルマガとか有料ブログは、そのコンテンツ内でサービスが完結する点で、既存の「本を買う」という行為と同じだと思う。伸びたブログが書籍化されたりするのも、お金の払い方という意味では、ブログと本が実は割と近いことの証拠かもしれない。
 

◆永井
ともあれ、KinUというプラットフォームができたことで、紙の本を買うことの意味が今より更に薄れるのは間違いなさそうだね。一部の人は「紙の本の方が手触りが良い」とか「紙の本は保存が利く」という理由で紙媒体で読み続けるだろうけど、今よりもさらに少数派になりそう。
 

▲山下
KinUで本を読むハードルが下がるとしたら、出版業界全体のパイはこれから増えるような気もしますね。構図としては「(電子)書籍vsバイラルメディア」といったところでしょうか。
 

◆永井
まぁ、KinUが広い意味で出版業界を救うかどうかは微妙だけどね。KinUに似たようなサービスでNetflixってあるじゃん。定額で映像作品見放題のヤツ。日本ではまだあんまり流行ってないけど、アメリカではスゴく流行っている。でも、このサービスもチョット雲行きが怪しい。

 

japan.cnet.com

 

◇市川
そうね、広い意味での出版業界をKinUが救えるかは、少し厳しい気がする。なんとなくだけど。
ところで山下くん、なんか1冊2万円もするいかがわしい洋書をKinUで落として嬉々として読んでたそうだけど……。

 

www.itmedia.co.jp

 

▲山下
外国のいかがわしい本を読むの、興奮するし勉強にもなって楽しいー!!
 

◆永井◇市川
ダメだコイツ……。

 

 こういうコンテンツはKinU向けかもしれませんね!(By堀江くらは)

 

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