同人サークル<アレ★Club>公式ブログ(通称:「アレ★Blog」)

ジャンル不定カルチャー誌『アレ』を作っている<アレ★Club>の日々の活動記録です。

【ゲームから考えよう】『スプラトゥーン』は1人でも勝てます~上級者の考え方・マッチングとリーダー像~

ゲームを普段とは違う角度で考察し、対談する企画【ゲームから考えよう】第1回。

チーム同士の対戦ゲームに必ず存在する「負けたら味方のせいにする奴」。
自分のせいにされてイライラした経験がある人は少なくないだろう。
もしかしたら、
読者の中にも味方のせいにしている人がいるかもしれない。
今回はそんな「負けたら味方のせいにする奴」から話を広げていく。

 

★対談者紹介★
■堀江くらは(@kuraharu
<アレ★Club>所属の本業はライター・編集者の人。ヘビーゲーマーでゲーム関連の仕事もしている。最近はe-sportsに熱中。

▲山下泰春(@yasuharu_are
<アレ★Club>代表。『スプラトゥーン』でS+ドヤ顔マン。

 

■くらは
山下君が書いた『スプラトゥーン』論で、「このゲームは1人で勝てる」と言っておきながら、負けると「味方のせい」って喚く人の話が出ていたよね。あれ、すごく的を射ていた。ゲームの下手なプレイヤーのことをスラングで「NOOB(ヌーブ)」って言うんだけど、NOOBの大半が「勝ったのは自分のお陰、負けるのは下手な味方のせい」って言うんだ。どんなゲームでもそれは変わらない。
でも、1つ気になることがあった。

 

▲山下
気になることって?

 

■くらは
「このゲームは1人で勝てる」っていうのは大体のゲームで正しい。少なくとも、「自分1人でも勝ってやる」というメンタリティでプレイしてない人は上手くならない山下君は『スプラトゥーン』の記事を書いてたから、『スプラ』で説明するね。まず、『スプラトゥーン』って何vs何のゲーム?

 

▲山下
4vs4ですね。

 

■くらは
パッと見はそうだね。でも、真のゲーマーは「1vs7のゲーム」って考えるんだよ。『World of Tanks』は1vs29(脚注1)、『LEAGUE of LEGENDS』は1vs9のゲームって考える。チームでプレイしていない限り、味方はプレイが始まるまで面子が決まらないから強さも分からない。味方になった奴が足を引っ張る可能性もあるから、勝つためには味方も敵と思った方がいい「このゲームは1人で勝てる」ってのはそういうことなんだ。実際、『スプラ』でも『WoT』でも『LoL』でも、強い人ってその時その時でやるべき仕事を見極めてそれを1人でやっちゃったりするでしょ?

 

▲山下
確かに、上手いプレイヤーが下手な人の中に混じったら、明らかに試合展開が一方的になりますね。ウデマエが2ランクも変われば、ほぼ確実に一方的になる。ただ、全員が上手いプレイヤー同士だとそうはいかないんじゃない?

 

■くらは
いや、上手いプレイヤーだけのマッチングでも変わらないよ。むしろ上手いプレイヤーは「味方をどう使うか」を知ってるあいつがこう動くからカバーしよう、とかね。だから上級者同士の試合だと、1番上手いプレイヤーが、他のプレイヤーの動きからその時やるべき最善手を察知して、「1人で連携をとる」とでも言うべきようなプレイをして、チームを勝利へ導くんだよ。

 

▲山下
言われてみれば確かに。S+はキルレートよりもゲームメイクの重要性を理解している人が多いリザルトだけ見るとキルレートはそこそこいいんだけど、私のたった1回だけのデスが、試合展開を大きく変えたっていうことは思い返せば意外とありましたね。特に私の使うブキは、キルを取ることよりも圧倒的にデスしないことの方が重要なので。1回のデスがそのまま敗北に繋がることは普通に考えられる事態ですね。

 

■くらは
どのレベルの戦場でも、上手いプレイヤーは、ゲーム中にリーダーになり、指示を出して引っ張っていくことが多い。チャットがあるゲームだと顕著だね。良いリーダーがいるチームは必然的に有利に試合を運べる。これは現実世界での立ち回りでも同じだ。
その一方で、悪いリーダーというのも存在する。冒頭で言った「味方に文句を言う奴」だね。この手のタイプは声が大きいからリーダーになりやすい。でも、指示らしい指示は出さずに悪口しか言わない。こういう人がリーダーになったチームは不利だ。

 

▲山下
ランダムに組まれたチームで共同作業をするとき、誰がリーダーになるかが重要なのは現実と一緒ですね。

 

■くらは
その通りだね。そこで重要なのが「ランダム」の部分。メンバーがどう選ばれるかでリーダーの動きが変わる
レーティングシステムがしっかりしてるゲームの場合は、ちゃんと誰が上手くて誰が下手かゲーム側が認識できているので上手い人は上手い人としか当たらない。上手い人同士のチームならリーダーが詳しく指示を出すことで他のチームメンバーと綿密な連携がとれる。上手い人同士が綿密に連携できるチームは、一個の緻密な生き物のように状況を制圧できる。
逆にマッチングシステムが機能してない・存在しないゲームの場合、下手なプレイヤーと同じチームになる可能性がある。下手な人と一緒になってしまった時は、一人で敵を倒しまくりつつ、他のメンバーには適度に指示を出す程度の方が勝ちやすい。詳しい指示を出してもその意味を正しく理解できるか、指示のとおりに動ける操作技術があるか分からないからね。

 

▲山下
自分がリーダーだとして、自分より実力がない人だらけのチームが組まれたら、自分はガンガン敵を攻めつつ周りには周りがついてこれる程度の指示を出して誘導していけばいい。同じレベルの集まりだったらみんなで相談しながらことを進めて、皆ができない部分を、一番仕事を理解している自分がカバーするってことですね。

 

■くらは
そう、そんな感じ。

 

▲山下
難しいのは、『スプラトゥーン』というゲームは『WoT』とかと違って、チャットで指示するということができないというところですね。「ナイス!」と「カモン!」という2つの反応/指示しか味方に対して行なえないように設計されているから、指示された側が積極的に意味を汲み取っていくしかない。

 

■くらは
細かい指示が出せないから、良いリーダーと悪いリーダーの区別がつきにくいかもね。せっかく指示したとしても、具体的には何を指示しているのかは指示された側が読み取らないといけない

 

▲山下
ルールにもよるけど、そう考えると『スプラトゥーン』は初心者に非常に優しい作りになってる。「ナワバリバトル」というルールは、塗っていれば勝てるルールだから、わざわざリーダーが細かく指示してゲームメイクしていく必要性が低い。逆に「ガチマッチ」というルールだと、うまくキルを取りながら勝利条件を満たす必要があるから、細かい指示が出せない事態はリーダーとしては歯がゆいものがあるかもしれない。

 

■くらは
『LoL』みたいにレーティングシステムがしっかりしてるゲームの場合は、上位戦場(注2)と下位戦場で勝ち方が全く違う。プロの配信を見てみると、下位(遊びのサブアカ配信)では一人でキルを稼いでいるけど、上位では味方との連携を重視している(注3)。

 

▲山下
『スプラ』もそっち側なんですか?

 

■くらは
いや、『スプラトゥーン』はちょっと違うと思う。あのゲーム、どうもマッチングシステムに難がある。公式で人口分布が出されていないからはっきりしたことは言えないけれど、聞いた話だとS(上から2番目)が一番多い可能性があるんでしょ? 普通のゲームだとこれは異常なんだよね。だから結構カオスな戦場がどこでも繰り広げられていて、「1人で勝つ」の難易度が高い気がする。マッチングシステムが機能してない・そもそもないゲームはどれもそうだね(注4)。

 

参考:『スプラトゥーン』のウデマエ分布のシュミレート

nandroid.xilab.org

 

▲山下
今、『スプラ』の人口分布の話が出たけれど、他のゲームの人口分布ってどうなっているんですか?

 

■くらは
普通のゲームの人口分布は、ゲームの求めている平均より下が多くなりやすいね。ポケモンだと1400台が一番多い(XY時代の統計)。1500がスタート地点だからそれより下だね。『LoL』は下から数えて1番目と2番目のブロシル(ブロンズ・シルバー)と言われている人たちが一番多い。彼らも一般的・Riot的にも平均以下のプレイヤーだね。ゲームが求めている平均値=スタート地点って考えてくれればいい。

 

▲山下
『スプラ』の話で置き換えると、Sになってからがスタートということになるんですかね……?なんだか、腑に落ちるような落ちないような……(笑)

 

■くらは
いや、任天堂は多分Bあたりを平均に持ってきたいんじゃないかな。『スプラトゥーン』はマッチングシステム自体がうまくいってないんだよ。マッチングシステムやゲームシステムの中心をどこにおいて、どう動かすのかってすごく難しいから、プレイヤーと対話しながら調整していくしかないんだよね。e-sportsとかが流行ってくれば、対戦ゲームも多くなってくるからそこら辺がどんどん重要になってくる

 

▲山下
でも、マッチングシステムが機能したからといって「1vs7」、「『スプラ』は1人でも勝てます」っていうのは変わらないんですよね(笑)

 

■くらは
そうだね(笑)競技シーンでもない限り、『スプラトゥーン』は1人でも勝てます!

 

---------------------余談---------------------------

■くらは
マッチングシステムのところで、多くのプレイヤーはゲームの求める平均より下にいるって話をしたよね。実はこれ、現実でも同じことが言える。

 

▲山下
と、言いますと?

 

■くらは
例えば、年収は300万円以下の層が最も多い。一般的な年収を400万って考えている人が多いのにね。パートタイマーの主婦やアルバイトをしている学生を考えれば当たり前といえば当たり前だよね。
パレートの法則というものがある。超簡単に説明すると、全体の8割を、2割の人が持っていくという法則だ。これを考えると、下のほうに人が集まるのも分かる気がするね。もちろん、残りの2割を奪っている人たちがどう分布するかわからないから必ずしも正しいとはいえないけどね。
こういうところも、ゲームと現実がリンクしていてすごく面白い。

 

▲山下
ここでいう主婦やアルバイター大学生は、ゲームで言うエンジョイ勢に値するんでしょうね。確かに、こうやって現実とゲームをリンクさせていくのは面白いかも。

 

■くらは
お金の話で例えるなら「国はビル・ゲイツ1人で建ちます!」みたいな感じかな?

 

amiibo ガール(スプラトゥーンシリーズ)

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ゲームを極める100の知恵(月刊スパ帝国Vol.23)

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 スパ帝の本はボードゲーム・シミュレーションだけでなく、様々なゲームで役に立つと思う。

 

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脚注(ゲームオタク向けの)

1 『WoT』のゲームシステムはTierシステムのせいで1vs29にならない時がある。個人的にムカつくが仕方がないだろう。じゃけんとっととTier10行きましょうね~。

 

2.Platから上位・Diaから上位。いや、Masterまで魔境だからとかそういう話はやめておこう。ただ、『LoL』はブロシルが一番多いから、Platから上位と認識しているプレーヤーが多いのではないかとは思う。

 

3.『LoL』プレイヤーが勘違いしないように言っておくが、これはプレイスタイルの話だ。ジャングラーを想像するのが一番早い。もちろんPickも関係してくる。低レートではYiかKindしかピックしないし、Reksaiはただのゴミなのだ。まぁ、詳しく書きすぎるのもアレなので、僕(くらは)の個人ブログにでもいつか書こう。

 

4.上にあげたゲームの中で一番「1人で勝つ」が難しいのは『WoT』だと思っている。重戦車は一方的に殺されるし、そもそもPZ1CでKV-1とかどうすんだよ! じゃけんとっととTier10MT乗りましょうね~。

 

余談だが、味方に殺された友人(ユニカム)が「味方に殺されるライフになっていた、その可能性を考慮していなかったから俺が悪い」と真顔で言っていたときには驚いた。どんな理不尽な目にあっても「1vs29」を徹底するのはまさしく上級者、もしくは変態である。