同人サークル<アレ★Club>公式ブログ(通称:「アレ★Blog」)

ジャンル不定カルチャー誌『アレ』を作っている<アレ★Club>の日々の活動記録です。

【『アレ』Vol.1に掲載します】落合陽一先生にお話を伺ってきました!

★対談者紹介★
●市川遊佐(@ichikawa_yusa
<アレ★Club>の副代表。主な関心分野は高速計算。

■堀江くらは(@kuraharu
<アレ★Club>WEB担当。本職はライター/編集者な人。主な関心分野はゲーム。

 

1.メディアアーティスト・落合陽一先生とは

●市川
僕とくらはさんで、7月7日(木)に『アレ』Vol.1のインタビュー企画として落合陽一先生にインタビューしてきました。現在、落合先生は「魔法の世紀」を掲げたメディアアーティストとして多岐に渡り活動しておられ、「現代の魔法使い」として多くの雑誌やメディアでも取り上げられています。

落合先生の代表作としては、超音波を使って塵を浮かび上がらせ、コンピュータで自在に制御することで3Dディスプレイとして機能させるという「Pixie Dust」が挙げられると思います。

 

Pixie Dust: Graphical Levitation System (2014-)

www.youtube.com

 

これらの刺激的な作品はただ落合先生が「人を驚かしてやろう」とだけ思って作ったものではありません。落合先生の作品の背後には、落合先生の未来に関する思想が秘められています。その思想を落合先生は、ご自身の著書である『魔法の世紀』と『これからの世界をつくる仲間たちへ』で書かれています。

その落合先生の思想のテーマが、技術と自然が混ざり合う「デジタルネイチャー」の時代です。これについて簡単に説明すると、まず、19世紀から近代科学が発達してきて、世の中からどんどんと分からないことがなくなっていきました。世の中から神秘がなくなっていったんですね。これが「脱魔術化」です。しかし、20世紀後半になると科学を使った複雑な技術が世の中を覆っていきました。その結果、人はまた世の中の仕組みがよくわからなくなりました。科学者でさえ、その全貌を把握できている人は少ないと思います。これが「再魔術化」です。再魔術化が進むと、世界ではどんどんと不思議なことが簡単に出来るようになります。それが21世紀である「魔法の世紀」だ、というのです。魔法の世紀では、これまでの常識とは違ったことが色々と出来るようになると考えられます。落合先生はそれについて研究をしていらっしゃいます。

 今回の僕たちのインタビューでは、落合先生が著書で書かれた未来予想についてじっくりと質問させていただくことで、未来に起こるであろう不思議なことについてイメージを膨らませることができたと思います。

インタビューを終えてくらはさん、ご感想の方はいかがでしょうか?

 

■くらは
取材の後半あたりから話の内容がSFチックになるに連れて、落合先生のテンションが上がっているっぽかったのがとても印象的でした。未来のことを考えるのが本当に好きなんだなあと感じました。

あと、これから市場に売るっていう製品版の「Pixie Dust」も見せてもらえたのはラッキーでしたね。下の写真の落合先生が持ってるベレー帽みたいなやつ。これを使うと超音波で塵を浮かせられる。もちろん、塵の浮かせ方はコンピュータで制御できる。けっこう欲しいです。

 

●市川
僕も欲しい。色々と出来ますよコレ。お金貯めよっと。

 

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2.「心を動かす」ってなんやねん!

■くらは
……ていうか市川さん、当初の僕らのインタビューの趣旨は「未来のイメージを膨らませること」じゃなかったでしょ(笑)言いなよ。

 

●市川
は、はい……実は企画立ち上げ当初はですね、落合先生が「心を動かす計算機」って言葉を使っていらっしゃるのをメディアで見て、それで反射的に思ったんですよ。「ワイみたいに『よーし、みんなの心を動かすでー!』って行動したらキモがられるだけの人間もおるんやぞ!」って(笑)というわけで、「『心を動かす』ためにはどうすればいいでしょうか?」って質問を中心にインタビューを立ち上げたんです。具体的には、「ちゃんと研究のプレゼンスを向上させて、社会の理解と共感を集めるにはどうすればいいんだろう?」っていう質問をしました。これはどの研究者も苦労していることですが、こちらに関してもとても具体的なご指南を沢山いただけたました。これも記事に掲載予定です。理系必読やで(笑)

 

■くらは
「心を動かす」といえば、市川さんがアートについてよく分からないので聞きたいと思っていた、というのもインタビュー立ち上げの動機にはあったよね。でもそんな市川さんも、事前準備として『魔法の世紀』と『これからの世界をつくる仲間たちへ』を読み出したあたりから急に「落合陽一、すごいぞ」って言い出した。本に書き込むだけでなく、ノートもバリバリ取って読んでたもんね。

 

●市川
そうですね。アートについて言えば、そもそもアートって言葉で僕がイメージしていたようなスタンスでは落合先生は作品を作っていなかった、というのが驚きでした。20世紀後半のアートだと、便器とかテレビとか置いて、それについて「これは○○を象徴していてそれが云々」っていう難しい批評がついてくる……みたいなのが多かった。僕は、アートって言葉でそういうのをイメージしちゃってたんですよ。でも、こういうアートには落合先生は懐疑的なんです。

落合先生は、20世紀後半に流行ったこういう「文脈のアート」よりも、人間の根っこにあるような部分を刺激する、アッと驚く「原理のアート」の可能性に注目していらっしゃる。『魔法の世紀』の中では「匂いだけ共有するデート」とか「うなずきん」とか、確かに人間の根っこを刺激するようなモノが例としてたくさん挙がっていました。

 

うなずきん NatureVer. Star

うなずきん NatureVer. Star

 

 

最初僕は「心を動かす計算機」ってなんやねん、って思ってたんですが、本で紹介されているこういう作品を見ると、確かにこれは人間の根っこを刺激する「原理のアート」だなって思ったんですよ。

 

■くらは
原理のアートについての話は、VRとかを中心としたこれからのゲームに注目している僕としても刺激的だった。VRについて落合先生がどう思っているかとかも聞けたよね。あれも記事にする予定でしょ?

 

●市川
します。簡潔だけど、未来を考える上で避けて通れないご意見を聞けたと思っています。

 

3.政治・仕事・友情・愛・人間について

■くらは
他にも、落合先生の思想についての疑問点をたくさん踏み込んで聞けたよね。落合先生が出ている他のインタビュー記事とかまではチェックしきれてないけど、市川さんはかなり攻め込んだ質問をしていたように思う。

 

●市川
落合先生の言葉を借りれば、人は「魔法をかける人」と「魔法をかけられる人」に分かれていくという話だったので、まずそうした未来での政治のあり方について質問してみたかったのです。SNSやGoogle検索などのWebサービスは、基本的にはユーザーにとって快い意見を優先的に見せてきますからね。その結果、世界のありのままを見るのがどんどん難しくなってきているように私は思うのです。

世界のありのままが見えなくとも、僕らは一つの世界を共有して生きていかざるを得ない。だから、対立も起こる。「世界観が物凄くバラバラなのに、一つの世界を共有することなんて出来るんだろうか?」「政治という難題に対して『魔法』にできることはあるんだろうか?」という疑問です。これは、昨今のポピュリズムや移民問題にも関わってくる疑問だと思っています。

 

■くらは
その疑問についても落合先生は誠実に答えてくれたよね。現実的だけど、技術を見る視線が優れているから「なるほど!」と思える構想がいくつか聞けた……このご時世に、現実的な構想が聞ける機会なんてなかなかないよね。

 

●市川
それだけ皆さん途方にくれているということでしょう。そんな中、これからの道を見据えて研究をしていらっしゃる落合先生から、色々なお話を聞けたのは本当に素晴らしい経験になりました。政治だけでなく、同じような感じで他にも様々なことについても聞けました。仕事や友情、愛、人間について、著書より一歩踏み込んだお話が伺えたと思います。

最後に、今回お時間を作って下さった落合陽一先生、本当にありがとうございました。良い記事になるよう頑張ります!

 

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 いただいたサインと共に

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<アレ★Club>代表の山下泰春「そんなワケで、落合陽一先生へのインタビュー記事が載っている『アレ』Vol.1は、11月23日(水・祝)に開催される第二十三回文学フリマ東京で頒布予定です!」

 

魔法の世紀

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これからの世界をつくる仲間たちへ

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