同人サークル<アレ★Club>公式ブログ(通称:「アレ★Blog」)

ジャンル不定カルチャー誌『アレ』を作っている<アレ★Club>の日々の活動記録です。

デブ戦~ぽっちゃり好きが叩かれる世の中に戦いを挑む~

★対談者紹介★
▲山下泰春(@yasuharu_are
<アレ★Club>の代表。BMIは21。ぽっちゃり女子が好き。

◎halyuki
ぽっちゃりになりきれない女。『アレ』Vol.1に小説を寄稿予定。

 

▲山下
ぶっちゃけた話、私ぽっちゃりした女性が好きなんですけど、日本って、「ぽっちゃり好き」とか「デブ専です」とか言ったら叩かれる風潮ってありませんか?特に、男性のデブ専って、女性のデブ専よりも風当たりが強い気がします。なんでこんな話をしてるかというと、実は昔合コンでそういうことを言ってしまって、男女問わず他の参加者にドン引きされたことがありまして……。

 

◎halyuki
そんなことがあったんですね(笑)女性同士だとあんまりそういうことはないんですが、合コンだとなんとなくカミングアウトしづらい感はありますよね。とりあえず、お気の毒サマでした。
でも、それって日本だけの問題じゃないでしょ。たとえば「Pottya」っていう5人組ぽっちゃりアイドルグループ(総体重380kg)ってのがあるんだけど、彼女たちのPVに、海外から怒りのコメントが寄せられたことがあります。要約すると「アメリカの文化は素晴らしいがデブだけはマネすんな!」みたいな感じの。当たり前かもしれませんが、大抵の人は「太っている=不健康」と思っているみたいです。そういう考え方が、デブ専の人が引かれる理由なんじゃないですかね。

 

www.youtube.com

 

▲山下
今コメント欄見ましたけど、マジですね。なんというか、「太っている=不健康」って、理解としては短絡過ぎやしませんかね。力士やオペラ歌手は総じて不健康なのかと。
そういえば、カンギレムって哲学者が「健康は規範的な概念である」と言ってましたね。Pottyaを批判している人たちは、きっとそういう価値観から、規範的にPottyaを批判しているんでしょうね。

 

◎halyuki
『健康帝国ナチス』ってナチス政権下での健康増進政策について書いた本がありましたけど、「健康」って心身の状態と、「規範」って倫理的なナニカが組み合わさると、一気にファシズム臭が漂ってきますね。禁煙・嫌煙問題しかり。

 

健康帝国ナチス (草思社文庫)

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それはともかくとして、そもそも不健康だと歌ったり踊ったりできないでしょ。Pottyaも健康には気をつかっていて、体重60kg以上である必要はあるけど、実際の体重は公表されている体重±2kgじゃないとダメって制限の中で活動しているそうですよ。少なくとも、胃下垂で胃腸虚弱で運動不足で毎日グータラして体重管理なんか投げてる私なんかよりはずっと健康的ですね。

 

▲山下
halyukiさんが健康かどうかは置いといて、「痩せている=健康」だって考える人もいれば、「太っている=健康」だと考える人もいますよね。たとえば『たかまれ!タカマル』というマンガでは、超ぽっちゃりしているメインヒロインが肯定的に描かれています。ただ、アレももしかすると「痩せている=健康」に対する逆張りとして、「規範的に」ぽっちゃりを肯定しているのかもしれませんが。

 

たかまれ! タカマル 1 (ビームコミックス)

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◎halyuki
あの作品の作中人物は誰もゆきえさん(メインヒロイン)の体型を気にしていない感じだけど、彼女を魅力的な存在として描いているってのは、そうなのかなぁ。単に作者が趣味嗜好の一つとして、ぽっちゃり女子を可愛らしく描いている可能性もあるでしょ。『たかまれ!タカマル』に関しては、別に「健康/不健康」の枠組みで考える必要はないと思いますよ。

 

▲山下
ここまでの話で思ったのですが、体型に関する問題って、趣味嗜好の領域に「健康/不健康」の規範を持ち込んでくる人がいるから生じているんじゃないですかね。実際問題、太っているキャラが登場する作品は、そのキャラが太っているという事実を自虐的なネタにする傾向が多いと思います。なので、『たかまれ!タカマル』のように、太っていること自体が肯定されており、ネタにもされない作品というのは珍しいかもしれません。

 

◎halyuki
なるほど。となると、逆説的に「痩せていることは無条件で肯定されている」ってのが、この話のミソなのかもしれませんね。要するに、痩せている人に「スリムだね」とか「引き締まってるね」って言ってもセクハラにはならないのに、太っている人に「柔らかそうだね」と言うとセクハラ認定される可能性が出る、と。
で、これにさっきの規範云々を絡めると、世間一般では痩せていることが強く肯定的に捉えられているので、太っている人が好きな人にとっては、好みを言いづらい環境になっている、ということが言えませんかね。

 

▲山下
一理あると思います。個人の趣味嗜好が規範概念に取り込まれた結果、不健康だと思われる趣味嗜好の持ち主も批判される、ということですかね。

 

◎halyuki
そう、だからデブ専向けエロゲの『デブトピア』や、ぽっちゃり女子向けファッション誌の『ラ・ファーファ』が世に出た時に、不快感を示す人と待ち望んでいたと喜びの声を上げる人にハッキリ二分したんですよ。
で、そういうのに不快感を示す人は、大抵「太っていることを肯定的に捉えるなんてとんでもない!」といった趣旨のことを言いますよね。ヒドい場合だと、「きっとお前がデブだからデブを肯定するんだ!」とか、画面の向こう側の人間に対して個人の体型まで妄想……もとい、透視しちゃう人もいたり。

 

▲山下
痩せ気味でぽっちゃり好きな私からすると、「寝言は寝て言え」って感じです(笑)
でも、太っている人が太っている人叩きに加担するのって、いわゆる「マイノリティがマイノリティを差別する」構造と同じですね。調べた限りでは、自身が太っていることをコンプレックスに思っている人が、こうした構造に加担することがあるみたいですよ。

 

blogos.com

 

◎halyuki
ありますね。直近だとLGBTの中での差別、古くからなら身障者達同士での差別、カジュアルなところだと「意識高い人」を殴る「意識高い人」とかも同じ構造な気がします。あと、太っている人を好むコミュニティの中でも、好まれやすい容姿と好まれにくい容姿があったりしますね。

 

▲山下
でも不思議なことに、それって美醜の問題とは違うんですよね。なんていうか、太っている人の中でも好まれやすいステレオタイプみたいなのがあるというか。

 

◎halyuki
二次元を例にすると、リアリティのある肉感の描き方とか、「ここがエロいんだよ!」と思わせるチョットした肉の魅せ方とかですかね。あとは、「一段腹よりも三段腹が好き!」とか。いわゆる「ぽっちゃりモノ」でもエセぽっちゃりとして忌避されるものがあったりもするので、ぽっちゃりを好むコミュニティの中でも、流行やホンモノ認定される要素があるんでしょうね。

 

▲山下
とはいえ、こういう話をすると、悲しいかな「デブ専」って妙なレッテルを貼られるのが、この国の現状です。別にいいじゃないですか、肉付きの多寡くらい好きに言わさせてくださいよ

 

◎halyuki
極端な話ですが、今太っている人を「このデブ!」ってdisってる痩せてる人は、結局は今ある規範にタダ乗りしているに過ぎないんですよね。そういう人って、もし「太っている=健康」って思われるようになって、今度は太っている人から「このガリ!」とか言われるようになったら、一体どうするんでしょうね。健康になるために太るのかしら

 

▲山下
医学的な話とかもあるでしょうけど、どれだけ体脂肪率低くても見た目太っている人とかも沢山いますから、見た目で健康/不健康について論じるのはナンセンスですね。とすると美醜の問題な気もしますが、美しさの価値基準なんて、時代や文化でいくらでも変わりますから、痩せていようが太っていようが、無理せず今の自分の体型のままで美しくあるようにするのが、一番良いんじゃないですかね。

 

◎halyuki
どんな体型であっても、自分の体型をポジティブに捉えてる人は可愛いし、応援したくなりますしね。でも、私はせめて胃下垂を治したいです。

 

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