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同人サークル<アレ★Club>公式ブログ(通称:「アレ★Blog」)

ジャンル不定カルチャー誌『アレ』を作っている<アレ★Club>の日々の活動記録です。

『教養』がないとクラシックを聞いちゃいけないの?

対談 山下泰春 市川遊佐

★対談者紹介★
▲山下泰春(@yasuharu_are
<アレ★Club>の代表。色々と幅広く聴く。最近は80年代テクノ。

●市川遊佐(@ichikawa_yusa
<アレ★Club>の副代表。元合唱団員でバッハとかが好き。

 

▲山下
よくジャズとかクラシックを聴くことがあるんですけど、そのたびに「すごーい」とか「頭良さそう」とか言われて悲しい思いをしてるんですよね。とりわけクラシックって、すごく高尚なモノと思われてないですか?多分その理由って音楽には教養が必要だと思われてるからだと思うんですよね。

それに、クラシックファンの一部には「××も知らずに◯◯を聴くんじゃない!!」みたいなことを言う人がいるじゃないですか。彼らの存在も、結構ネックになってたりしませんか。

 

●市川
実際、そういう「アレも知らずにコレが分かるはずがない!」みたいなことを言う人はよく見かけるよね。どういう発想でそういうこと言ってるかわからないけど、門戸を狭めるようなことを言えば、そのジャンルの将来も閉ざされると思う。自分が死んだあとを引き継ぐご新規さんを、大切に育てられないジャンルが死ぬのは当然だよ。まぁ、死んだあとなんてどうでもいいのかもしれないけど(笑)

でも僕は、音楽には教養はいる派だね。とりあえず山下くんの言い分を聞いてみようか。

 

▲山下
まず、音楽における教養を、「曲にまつわる知識」、つまり「曲以外のもので楽しむこと」っていう風に考えている人がいますが、これは違うと思う。

たとえばベートーベンは、ナポレオンを見て「英雄」(『交響曲3番』)を作ったという逸話があります。でも、これを知ってるから音楽の理解が深まったりするものでしょうか。そういう楽しみ方もアリかもしれませんが、それって想像力がモノを言う世界じゃないですか。想像力が貧困だと、ナポレオンがどういう人かイメージが沸かないかもしれない。そういう想像力で曲を解釈しようとすることは、曲の解釈を狭めているだけなんじゃないでしょうか。

 

エクリチュールの零(ゼロ)度 (ちくま学芸文庫)

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●市川
そういう人、割といるよね。その批判には同意するよ。まあ、曲をそういう情報から楽しんでいる人も結構多いって聞くから、一概には批判的になりにくいけどね。でも、曲にまつわる知識を持っていない人を叩くのは間違いだよね。

 

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 

▲山下
それに音楽史的に考えると、音楽ってもともとは感情の発露だったわけでしょう。楽しいと思うから、歌って踊る。そして周りの人を巻き込んでいく。こういうエネルギーを持っているのが音楽だったと思うんですよ。その時の音楽って、特定のコミュニティの中で自然に語り継がれていくものだったと思います。

 

音楽美論 (1960年) (岩波文庫)

音楽美論 (1960年) (岩波文庫)

 

 

●市川
僕もそう思う。でも音楽のリズムが譜面に起こされるようになってからはどんどん音楽が高度化していって、複雑なリズムをとるようになっていった。すると、今度は演奏する技術の方も音楽にとって切り離せない問題になってきた。というのも、作られた音楽をちゃんと維持して後世に伝えていくためには、こういう演奏技術もちゃんと鍛えて身につけておかないといけないからね。

音楽がまだ単純なものだった頃は、そこまで演奏技術は問題にならなかったんじゃないかなあ。まあそれでも極端なノイズとかリズム感のなさみたいなのは排除されていたかもしれない。

 

音楽の基礎 (岩波新書)

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▲山下
演奏会に演者として参加するからには一定以上は上手くなってないとダメだってことですね。

 

●市川
そして音楽が複雑になると、聴く側にも曲を味わうのに教養が必要になってくると思う。複雑な和音の流れを聴いて、それを味わうには頭の中で流れてくる音をリアルタイムで処理しなければならない。これには慣れがいる

よく「繰り返し聴くと良さが分かってくる曲」のことを「スルメ曲」って言うでしょう。「クラシック音楽の教養がある人」って、スルメ曲への順応速度、簡単に言えば理解が早い人だと言うと、クラシック嫌いの人にもイメージがしやすいんじゃないかな。音の構成が精妙かつ複雑な曲を楽しめるようになると、なかなか病みつきですよ。

 

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……もちろん、どんなに教養を積んでも体質的あるいは性格的に合う曲、合わない曲はあるけどね。たとえば、じっくりみっちりと曲が構築されていくのが好きな人だったらバッハとかオススメだけど、経験談的にそういう人、少ないからねえ……。

 

▲山下
じゃあなんでリンク貼ったんですか(笑)

 

●市川
こ、個人的な趣味……えっと、そういう音楽が好きになれない人、たとえば不思議な感じが好きな人はドビュッシーとか聴けばヒットする可能性が高いと思う。ウットリしたい人はショパンとかリストとか辺りをテキトーに聴いてください(半ギレ)

 

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▲山下
結局布教ですか。ショパンとかリストとか嫌いなのも、それ完全に市川さんの好みでしょ……(笑)

ともあれ、教養がある方が曲をすんなり味わいやすいということには納得しました。その意味でなら「音楽を聴くのに教養は必要」という意見にもうなずけます。

でも、なぜ「教養、あった方がいいよね」って話から、いつの間にか規範的な「知ってなければ聴いていると言ってはいけない」とか「上手くなければそもそも演奏してはいけない」みたいな人が産まれてしまったんでしょう。

 

●市川
それは、ロマン主義の悪影響がですね……っていう感じの話が同人誌版『アレ』Vol.1に掲載されると思うので、皆さんお楽しみに!無事に載せられるように、編集部一同執筆者を全力で応援中です(笑)

 

▲山下
やっぱり布教じゃないか……(笑)

 

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)

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ニュー・ベスト・バッハ100

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