IoTが生み出す「面倒見のいい」監視社会
こんばんは、<アレ★Club>事務局長の永井光暁です。この前、チョットした用事でIot(Internet of Things)に関するシンポジウムに参加したのですが、文系の僕にはぶっちゃけ何を言っているのか全然分かりませんでした。そこで、仕方ないので「理系の人間なら分かるだろう」と思い、理系の市川遊佐君に話を聞いてみました。
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◆永井
この前とあるイベントでIoT(Internet of Things)の話を聞いたんだけど、何か分かったような分かんないような、漠然とし過ぎていてイマイチ何が言いたいかハッキリしなかったんだよ。「モノのインターネット」って訳せるらしいけど、モノがネットに接続されることで、具体的にどう変わるの?チョット理系の市川君に聞いてみたい。
●市川
うーん、理系だし肩くらいまで情報系に浸かってはいるけど、IoTはちょっと直接はやってないんだよなあ。でもIoTってのはつまり、その辺にあるセンサーとかがネットを通して情報をやりとりできるようになるってことなので、多分「そこら中に無線機持った警備員が立っている状態」に近いようなことができるんじゃないかなあ。
◆永井
それだけ聞くと、何かより監視社会化していくような感じがするなぁ。フーコーのパノプティコンじゃないけど、サービスの作り手がユーザー全体を監視しているようなイメージが浮かぶし、サービスの作り手が大きければ大きいほど、より広い範囲を包摂することになりそうで怖い。まぁ、最初から真っ当に生きている人にとっては、問題ないのかもしれないけどね。
●市川
Google独裁、Amazon独裁って話だね。個人的にはそれは楽観視していて、たしかに一挙手一投足ログを取られるのは怖いことだけど、でもその未来では誰がどんな人物で誰と友達かとかがGoogleとかには分かってる世の中ってことでしょ。
◆永井
確かにそうだね。で、今考えたんだけど、さっきの「真っ当に生きている人にとっては問題ない」って話をIoTと繋げて考えたら、たとえばGoogleがキチンと俺たちの一挙手一投足の意味を、それまでのログ=文脈を踏まえて理解してくれるってことなのかな。
●市川
そう。仲の良い友人同士が集まって、そこで人前ではちょっと言いにくいような、たとえばポリティカル・コレクトネスに引っかかるような物言いとかをしたとする。でも、未来のサービスはそれが「他人を傷つける犯罪的な所業」なのか「気持ちのイイ仲間内のちょっと下品なジョーク」なのか判別ができる。原理的には。
◆永井
ふむ。だとすると、IoTによって今のSNSの怖さみたいなモノも、なくなるとまでは言わないけど減らせるかもしれないね。今は、身内のノリで遊んでたらうっかり人前に出しにくい、でも犯罪というほどでもないことが拡散されたりしちゃうし、グレーなことがやりにくい世の中になってるしね。その閉塞感をもう一度減らすことができれば、生きやすくなるだろうなぁ。
●市川
「監視社会」と言うとなぜか皆怖い世界を想像するんだけど、僕はもっと単純に「面倒見がいい」社会のことだと思っていいような気もするんです。ハクスリーの『すばらしい新世界』がオーウェルの『一九八四年』に対立するかのように言われることがあるけど、ハクスリーのアレ、面倒見悪過ぎでしょ。麻薬がないと維持できないのに調和もクソもないよ。(笑)
◆永井
なるほどね。ちなみに、薬物に関しては一家言あるんですが、それはまた次の機会に話しましょう。(笑)
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